医師の行った医療行為に問題があるとして、損害賠償の請求をするためには、医師が行った行為に過失があり、生じた悪い結果(後遺症が残ったなど)に対する因果関係があることが必要です。
過失
医療過誤の過失とは?
では、どのような場合に、過失が認められるのでしょうか。
過失とは何でしょうか。
医療過誤の過失とは、医師の注意義務違反です。
注意義務には、結果を予見すべき義務と、結果を回避すべき義務があります。
医師の行った行為、もしくは行うべきであった行為に過失が認められなければ、医療機関の法的責任は認められません。
多くの場合、過失の有無がポイントとなります。
医師には、その診療行為において、様々な注意義務が課せられておりますので、個別に検討、判断することが必要となります。
診療過程で見た類型

診療過程で医療過誤を見た類型としては、以下のものがあります。
・説明義務違反(特に、緊急性を要しない治療行為で重大な結果が発生した場合)
・検査義務違反(すべき検査をしなかったなど)
・検査上の注意義務違反(採血による神経損傷など)
・治療方法の選択ミス
・手術方法の選択ミス
・手術中の管理義務違反(麻酔管理ミスなど)
・手術後の管理義務違反
・手術の遅れ(帝王切開時期の遅れなど)
・入院中の管理義務違反(MRSAなど)
因果関係
問題とされる医療行為と、損害の発生との間に、一般的に見てそのような行為があれば同様な損害が発生する可能性がある場合に、因果関係が認められます。
従って、仮にその問題となる医療行為の存否にかかわらず、結果が発生していたのであれば、因果関係は無いということになり、その場合には、基本的には、医師の責任は問えないことになります(但し、説明義務違反、期待権侵害が問題となることもあります)。
人体は複雑で、未知の分野もあり、因果関係の存否の判断や立証が難しい場合もあります。
損害
損害の算定
ケースにもよりますが、一般的には下記の損害について損害賠償請求を行います。
・治療費、入院交通費
・休業損害、逸失利益(後遺障害が残って以前と同じように働けなくなった場合等)
・慰謝料(通院した分の慰謝料、後遺障害の慰謝料)
・雑費
・死亡の場合には、亡くなった方の逸失利益、慰謝料、遺族固有の慰謝料、葬儀費用
・弁護士費用の一部など(裁判の場合)
このように、医療過誤、医療ミスとなるかどうかは、事故の内容(カルテの検討もし)、経過、過去の判例等も踏まえて検討する必要があります。
そこで、医療過誤の疑いのあるケースについては、まず、弁護士が調査をすることが通常です。